ポーランドの食文化

夜食(Kolacja)と蜂蜜酒

その昔、ポーランドの伝統的な食事スケジュールは、

 

朝6時 śniadanie(朝食)・・サンドイッチ、オートミールなど

朝10時  drógi śniadanie(第二の朝食)・・サンドイッチ、オートミールなど

昼3時 obiat (夕食)・・メインのディナー

夜8時 Kolacja (夜食)・・サンドイッチ、オートミールなど

 

日に4回が習慣でした。

共産主義時代は、就業時間が朝7時~午後3時なので、このスケジュールが理に適っていたのです。

それは今でも変わりません。

アメリカ風の企業が増えつつある傍らで、依然として昔ながらのスケジュールを貫いている企業・役所も多く、朝7時就業の方は、6時に朝食を食べ、正午前に再び軽い食事をとり、午後3時に帰宅するとobiat(メインのディナー)を食べて、夜8時にもう一度軽く腹ごしらえをする、という生活を今も続けておられます。

(ゆえにポーランドの道路は午後3時~4時に一番混み合います)

ということは、まともな食事は『一日一回』なわけですが(日本のように、昼=カツ丼定食、夜=ぶりの照り焼き、小鉢、味噌汁のような、ダブル・メインではない)、これが案外健康によろしくて、午後3時頃にこってりしたメイン料理をとってしまえば、就寝までにほとんど消化されるので、太りにくいんですね(酒とハムを過剰摂取さえしなければ)。

美味しく食べて痩せる秘訣は「昼にどっさり食べて、夜は軽食にする」だとつくづく思います。
(ちなみにポーランド女性はたいてい7号体型です)

 

ポーランドのKolacja(夜食)

ポーランドのKolacja(夜食)


そう考えると、ポーランドの人は一日中サンドイッチを食べているような印象がありますが、「サンドイッチ」といっても、「ハムサンド」とか「卵サンド」みたいなアレではなく、Kanapki(カナプキ)と呼ばれるオープンサンドです。

和食にたとえれば、白ご飯の上に明太子や塩昆布や焼き鮭をのせて「う~む、ご飯がすすむ」と顔をほころばせる感じ。

 

焼きたての、オールナチュラルなパンに、ハム、チーズ、トマト、レタスなどをのせてかぶりつく。

これがパン主食圏の人々にとって、「う~む、夜食がすすむ」の世界なのです。

 

そんな夜食のお供にピッタリなのがMiód Pitny(蜂蜜酒)。

食前、小さなショットグラスに注いで、食前酒としていただきます。

 

 

Półtrak Jadwiga(プウトラク ヤドヴィガ)

Półtrak Jadwiga(プウトラク ヤドヴィガ)


今回、いただいたのは、一番星のPółtrak Jadwiga(プウトラク ヤドヴィガ)。

さすが水1リットルに対し710グラムもの蜂蜜が含まれているだけあって、こってりした甘みは随一。

聞いた話では50種類以上の薬草が使われているそうで、まさに「味のブーケ」と呼ぶにふさわしい華やかさです。

Kanapkiに使うハムやソーセージが塩辛いので、蜂蜜酒を合わせると、程よくマッチ。

ウォッカのように飲み過ぎないので、健康にもいいかもしれません。

ポーランド料理 美味しさのヒミツ

一度でもポーランドに旅行して、郷土料理を味わった方なら、その美味しさにきっと感動されたことと思います。

ピエロギ、レッドボルシチ、ビゴス、ジューレック、キノコのスープ……etc。

フレンチでもなく、イタリアンでもなく、どんな『洋食』にも当てはまらない、新しい味との出会い。

それが『ポーランド料理』です。


洋食でありながら、どこか懐かしく、親しみを感じさせるメニューの数々。

そのヒミツは、北海道を思わせる、豊かで広大な大地にあると言えるでしょう。

たとえば、町中の家の庭に当たり前のようにリンゴ、洋梨、ラズベリー、さくらんぼが生っている。

実りの季節になると、庭先のリンゴをかじりながら、カゴいっぱいに摘んだラズベリーで自家製のジャムを煮る。

そんな光景、日本ではなかなか間近に見ることができないのではないでしょうか。


歴史を振り返っても、ロシア、プロイセン、フランス、オーストリアといった欧州列強の支配下に置かれ、ベルリンの壁が取り除かれた実に1989年に至るまで、真の意味での自由独立はなかったポーランド。

列強諸国がこの国を支配したがった理由の一つには、一年を通じて美味しい作物を育む大地の豊かさがあったといっても過言ではありません。

しかし、列強の支配下に置かれた苦しい時代にも、各家庭では、伝統の味が受け継がれてきました。

常に物不足は当たり前、先進諸国の豊かさとは切り離された社会環境にあったからこそ、インスタントやレトルトに頼らない、昔ながらの料理法が今にしっかりと伝えられてきたのだと思います。

何かと言えば「調味パウダー」「○○の素」「冷凍○○」「人気パティシエの○○」に依存しがちな日本人からすれば、ピエロギ(ポーランド風餃子)の皮やマカロニを小麦粉からこねたり、自宅の庭先にミツバチを飼って蜂蜜を集めたり、山で摘んだキノコでピクルスを漬けたり、大きなボトルを何本も用意して果実酒を地下室いっぱいに作ったり……というのは、尊敬せずにいないくらいだけれど(私なら出来合のものを買う)、ポーランドの人に言わせたら、

だって、手作りの方が美味しいでしょう?

ごくごく自然な生活の一コマなんですね。


ポーランド料理と出会うことは、自らの価値観を振り返ることでもあります。

「ああ、こんな生活が、今も残っているんだ」と気付いた時、それは単なる「ランチ」ではなく、『文化との邂逅』になるのです。